【体験談】アスペルガー当事者が経験した社会人1年目の様子とは?

ASDの日常

こんにちは。みなみ。(youtube.com/@minami-life)です。

この記事では、私の発達障害(ASD)体験をもとに、メンタルについて投稿しています。

質問者
質問者

「発達障害(ASD)当事者や子供が、将来就職して困ることを先回りして知りたい」「健常者だけど、発達障害者の困りごとや悩みを知りたい」「発達障害(ASD)のリアルが知りたい」

こういった疑問にお答えします。

本記事の内容

・アスペルガー当事者が体験した社会人1年目の様子とは?
・社会に適応するためにやったこと
・社会人2年目で自分の得意・不得意を発見

30代で発達障害(ASD)と強迫性障害と診断された当事者が、記事を書いています。

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アスペルガー当事者が体験した社会人1年目の様子とは?

自身が発達障害(ASD)とは気づかずに、一般枠で就職します。IT系の中小企業にシステムエンジニアとして入社しました。

しかし、周りの同期と同じようにやっているつもりでも、なぜか上手くいきません。上司からもなぜか目を付けられて、何度も叱責を受けました。

具体的には、「話が嚙み合わない」「的外れなことを言うな」などです。いろいろな出向先をたらい回しにされましたが、徐々に自分に向いている仕事・向いてない仕事が分かってきました。

この記事では、発達障害(ASD)当事者の会社に就職してからの様子をリアルに紹介します。

耳からの情報処理が苦手

1か月ほどの新人研修の中で、電話対応がうまく出来ずに苦労します。いつ鳴るか分からない電話を前にすると、ずっと緊張状態が続いて他のことが手につきません。電話のことで頭がいっぱいになり、昼休みを迎える頃にはクタクタになっていました。

電話に出たときにも困難があります。相手の言葉を聞き取るのが難しく、何度も聞き返して怒られます。また、短期記憶が弱くて、聞いた言葉はすぐに忘れてしまいます。頑張ってメモを取ろうとしましたが、マルチタスクが苦手で聞きながらメモが取れず、複数の要点を頭の中で抑えることができなかったので、大事なところが抜けてしまいます。上司に『なぜ出来ないのか』をうまく言葉で説明することが出来ず、『きちんとメモを取れ』と何度も言われて辛かったです。

嘘ばかりの会社にウンザリ

希望した仕事をすることができず、給料体系も入社前に聞いたものと違ったものでした。新人研修後に個別面談が行われて、どんな仕事をやりたいかを聞かれます。

システムエンジニアの募集で入社したので、まずはプログラマーとしてシステム開発に携わりたいと答えます。ですが「まずは社会人経験を積むこと」と言われて、まったく違う業務をOJTとしてやることになります。

出向する直前で「OJT中は社内休業扱いで給料は6割(約10万円)」と本社から説明を受けます。ですが「社会とはこんなものだ」、社会人経験を積めばシステム開発ができると解釈して了承しました。

ですが、OJT期間が終わる気配がなく、この給料での生活が一年間続きます。しかし、「ここでやっていけないのならどこに行ってもダメだ」という上司の言葉、自身の「奨学金」が理由で、辞める選択肢はありませんでした。

入社3年目の個別面談で、システムエンジニアの仕事がしたいことを伝えます。

すると、システム開発の経験があるか問われて「ない」と答えると、経験がない人は無理だと言われます。社会人経験を積めばやらせてくれるという話は、なかったことにされたのです。心の中で「騙された」と怒りが込み上げます。

システム開発の経験を積みたいから仕事がしたいのに、それが伝わらずに落胆しました。

社会には平気で嘘をつく人間が多すぎます。言葉通りにしか受け取れない自分にとって嘘をつく人間は天敵です。

コミュニケーションは駆け引きだという方もいますが、発達障害(ASD)者にとっては、駆け引きの土俵にも立つことができない負けが確定しているゲームのようでした。

新人だけど配属されてずっと放置

仕事への意欲やモチベーションはありましたが、上司から「そこに座って何かやっていて」を最後に、目の前から姿を消して放置することがほとんどでした。

「何かやることはありますか?」と聞いても無視されます。しかし、「日報」や「一日のスケジュールを書け」と指示されて何を書けばいいか困っていると、「自分で考えろ」といわれます。

ですが、「上司の言うことを聞くように」と新人研修の際にいわれていたので、「自分に責任があるかも」と悩み、上司の言葉の意味を一日中考えていました。

言葉通りにしか受け取れない

言葉通りか?言葉通りじゃないか?なんて言葉で判断できないので分かりません。上司から仕事の指示をされたときの出来事です。上司とコミュニケーションをとることになりますが、指示が聞き取れなくて何回も聞き返すことや、言葉の意味や意図が理解出来なくて怒られます。具体的には、以下の通りです。

・話が噛み合わない
・的外れなことを言うな
・言葉をそのままの意味で鵜呑みにするな
・返事や反応が遅い
・無意味な煽りをするな
・自分の事ばかり考えないで、相手のことを考えろ
・ここでうまくいかなかったら、どこいってもダメだぞ

上司に「もう帰れ」と言われて、言われた通りに帰ろうとするとなぜか怒られました。自分にとって上司の「もう帰れ」という言葉は、業務命令であり指示だと解釈していたからです。

「言葉をそのままの意味で鵜呑みにするな」と言われましたが、言葉通りか?言葉通りじゃないか?なんて言葉で判断できないので、意味が分からず混乱するのが本音でした。

職場で誰も助けてくれない

同僚や先輩に助けを求めましたが、冷笑されて避けられます。まるで困っている自分を見て楽しんでいるようでした。

本社に現状を報告すると「やっぱりか」みたいな反応をされて、本社待機することになりました。まるでこの結果を予想していたようです。その後は、いろいろな職場をたらい回しにされます。

1から始まる環境が何度も続くことによるストレスは、ダメージとして蓄積していきました。落ち着いて仕事ができず、心が休まることはありませんでした。

社会に適応するためにやったこと

耳からの情報処理が弱く、「相手の言葉が聞き取れない」「相手の言葉が理解できない」「相手の言葉をすぐ忘れてしまう」ことがたくさんありました。

意を決して相談したこともありますが「そんな悩み、誰にだってあるよ」「集中して聞いてないからだ」「ちゃんとしろ」と言われて、真面目に聞いてもらえませんでした。

「今までどんなに努力してもダメだったから、ほかのことで補おう」と考えを改めることにします。そこで考えた自分なりの処世術について紹介します。

見本となる人を真似する

見本となる人を見つけて、真似することが自分の処世術です。目で見た情報処理には自信がありました。いつも一緒に行動していた一つ上の先輩を見て行動やしぐさを真似することから始めます。

「分からないことがあったら先輩を参考にする」を続けて、先輩のコピーになるイメージでやりました。仕事への姿勢・客先との付き合い方・手の抜き方・さぼり方を教わりました。

言葉には曖昧さがあって人により解釈が異なることがありますが、目で見た情報には嘘偽りがないので好きな方法です。自分にとって一番納得できるやり方で、ハマった方法だと感じています。

社会人2年目で自分の得意・不得意を発見

一緒に行動していた先輩とは離れて仕事をする機会が訪れます。某大手キャリアで伝送ネットワークの構築業務です。自社の人間は自分だけでしたが、下手に自分の過去を知っていて、意地悪するような人が一緒じゃなかったことに一安心しました。定型業務・非定型業務を経験して、自分の得意・不得意が分かってきます。

得意で向いていた仕事

マニュアルや手順がしっかりしている業務は得意で向いていました。不確定要素がなく、安心して業務をすることができるからです。

具体的には、「回線構築に伴う光ケーブルの敷設・接続・開通試験」「回線廃止に伴う光ケーブルの撤去」、「ネットワーク装置及び光ケーブル収容表の管理」「手順書の作成」がありました。

仕事がシンプルではっきりしていたこともあり、やりやすくて取り組みやすい印象がありました。仕事の指示も曖昧さがなく、聞き取れなかったとしてもメールで送ってくれたので助かりました。

ただ、現場作業では休憩時間が決まっていて、トイレに行けなかったのだけは辛かったです。

ミスをすることなく、黙々とやっているだけで自身の評価が上がっていきました。

苦手で向いてなかった仕事

臨機応変な対応が求められる業務は向いてなかったです。想定外が起こるとパニックになり、頭が真っ白になるからです。

具体的には、「無線機の撤去に伴うアラーム監視」がありました。新規のプロジェクトで作業フローや手順が確立していなかったので、リーダーを中心に手探りをしながらのスタートでした。

アラーム監視中に想定外事象が起こると、まず分からないことを言語化したあとに、関係部署に説明して情報共有をしながら最適解を求めます。最後に、責任者に許可をとって問題を解決する感じです。

「うまく説明できるだろうか」
「知らないことを聞かれたらどうしよう」

仕事中はずっと不安でそわそわしていました。先が見通せない業務は二度とやりたくないです。

まとめ

発達障害(ASD)とは知らずに、社会人生活をした当事者のリアルを紹介しました。

新入社員の頃から困難の連続でしたが、「自分の能力がないだけ」としか思っていなくて、メンタルクリニックは受診しませんでした。もう少し早くメンタルクリニックで相談していたら…と今では思います。

発達障害(ASD)の子供がいる保護者の方や当事者の方に、自身の体験を共有することよって少しでも力になれたのであれば嬉しいです。

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